会社員時代、昼休みに書店で見かけ、
ジャケ買いした本です。
読みやすい本とは言えませんが、
とても興味深い記述がたくさんありましたので、
ご紹介したいと思います。
バーナード・リーチ 著
石川欣一 訳
『陶工の本』河出書房新社 2020年
本との出会い
帯に、
「『何が本当に美しい焼物』なのか、
その問題を具体的にも説いてあるのは、
他の本の追従を許さない・・・」
とあります。
この一文のパワーのすごさ。
魅かれて買ってみることにしました。
うつわって、毎日使うものなのに、
料理や服に比べて、関連書籍がとても少ないです。
大分すると、器と料理の写真集や、
器の産地や特徴を紹介するもの、
あとは、芸術系の刊行誌がメインかなと思います。
それらの書籍で、
器に関する知識を得ることはできるのですが、
なんでしょう、なんだかあまり頭に入ってこないというか。
もやもや・・・
私、器屋さんやろうと思っているけど、
向いてないのかな・・・。
と思ったりもしていました。
気づき
しかしこの本に出会って、わかりました。
うつわの知識をもつ前に、私には、
うつわを観る心が必要でした。
清い心とか、そいうのもではありません。
陶芸作品に対する想像力の持ち方のようなものです。
その気づきは、読み始めてすぐでした。
抜粋して引用します。
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「まず明瞭にしておきたいのは、工作の全過程ないしはそのほとんど全部を、彼自身の手で行う個人の陶工、或いは陶芸家の作品が一つの美的範疇に属し、産業化された製造の工作によって出来上がったもの、換言すれば大量生産が、別の、そして全く異なる範疇に、属することである。
彼自身の陶器を轆轤(ろくろ)で引く、工芸家の作品には、デザインと実行の一致、手と分割されぬ個性の協力がある。デザイナーと技工の両方が一つだからであり、これはしばしば部分部分が肩に取られ、あるいは形をつくられ、その後これらが組み合わされる道具に、絵を描き、モデルを作ることを仕事とする大量生産のデザイナーの作品には、対応物のないことである。」
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『デザインと実行の一致』
『手と分割されぬ個性の協力』
なんてかっこいい言葉でしょう。
このように卓越した表現力で、
研ぎ澄まされた美意識を少しずつ分けてくれたようでした。
量産品などの良し悪しのことを言いたいのではなくてですね。
ただ、両者を“食器“と一括りにせず、
少し見方を変えることで、器の楽しみ方に
幅と奥行きができるのだと思ったのでした。
●おまけ
1955年に刊行された書籍を底本とし、2020年に再刊されたものです。
カバーの色使いは思い切ってポップですが、
中の装丁はガラリと違う印象で、気に入っています。